福祉国家における優生政策の意義 ―デンマークとドイツとの比較においてー

久留米大学文学部紀要 社会福祉学科編第12号 (2012)
福祉国家における優生政策の意義
―デンマークとドイツとの比較において―
森永佳江
The Significance of Eugenic Policy in the Welfare State
―A Comparison between Denmark and Germany―

【要約】本研究は,福祉国家の典型例としてのデンマークと,社会国家(福祉国家)を経てナチズム
へ移行した歴史を持つドイツとを比較することによって,福祉国家における優生政策の意義およ
び福祉国家と優生政策の親和性を明らかにするものである.研究対象とする時代は,優生政策が
積極的に行われた 19 世紀後半から 20 世紀前半にかけてである.
優生政策は,デンマークとドイツで主に 1920 年代から実施された.普遍的な社会福祉を実現し
ようとしていたデンマークと,国民の生存権を世界で初めて保障したワイマール共和国は,限られ
た予算で国民に「手厚い福祉」を保障するために,社会構成員の誰が福祉の対象として相応しく,
誰が相応しくないかを選別し,後者に入るとされた重度の知的障害者や精神病者に対して婚姻を
禁止したり,断種や去勢の対象としたりする法律を制定した.このような「不良な血統」の再生産
を防止する政策は,デンマーク福祉国家やワイマール社会国家では国民の「高福祉」のために行わ
れたが,ナチス政権期に入っては,共同体の健全性を維持するために講じられた.
以上を踏まえて,本研究では,福祉国家における優生政策の意義が,①優生学的見地から人間を
「不良」か否か判別した上で,②「不良な者」の再生産を予防する,という点にあったことを明らか
にした.
【キーワード】福祉国家,優生政策,断種,障害者

福祉国家における優生政策の意義 森永 2021

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

Translate »
%d人のブロガーが「いいね」をつけました。