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「出生前検査と障害者の尊厳、人権学習会」案内文アーカイブ

2022年3月に議員会館で開催された「出生前検査と障害者の尊厳、人権学習会」について、検索しても見つからないという声が寄せられたので、当時の特設HPから内容をそのままDSIJ PRESSにアーカイブ保存を致しました。講演全文全ビデオ収録(YouTube)もご参照ください。この問題について関心をお持ちの方々の参考にさせていただければ幸いです(DSIJ事務局)


*本ページの情報は頻繁に更新されていきますので、時々チェック確認をお願いします。
*出生前検査を全妊婦に周知する厚労省・産婦人科医会の施策は障害者に対する人権侵害ですから即刻中止を!


テーマ:
「出生前検査と障害者の尊厳、人権学習会」

日 時:3月17日(木曜日)午後1:00~ 3:30 (12:30から受付

他の院内集会と重なったので基調講演の開始時間を1:30からにいたします。

主 催:茨城県ダウン症協会有志・DSIJ事務局

会 場:場所:参議院会館102会議室(1階)。東京都千代田区永田町2-1-1

最寄り駅は東京メトロ有楽町線永田町駅での一番出口徒歩4分。

         *国会議事堂前駅(7分) 溜池山王駅(12分)

参 加: どなたでも参加できます。
入り口で申し出て参加証を受けて、会議室にお進みください。 参加費はありません。

タイトル写真は英国のDon’t Screen Us OutのHPより。

国会では2022度予算案が2月22日に衆院で通過、予算委員会で可決されました。

この予算の中には、年齢制限なく全妊婦にダウン症の出生前診断を周知させるというための予算も含まれていました。

この、衆議院予算確定後の2月24日付けで「NIPT等の出生前検査に関する専門委員会」が新たな認証制度等について(報告)などの具体的施策の中身を公表しました。予算通過後にその中身を公知されても、この内容について論議して、国会における予算委員会の論議をすることはできません。

参議院での論議に私たちの意見が反映できるかは、わかりませんが、人権蹂躙政策が国家予算で進められることには反対をしていかなければならないと思います。

学習会のタイムテーブル

1:00~1:30:ダウン症についてとダウン症を持つ人の魅力と実力 百溪英一(東都医療大学客員教授、免疫病理学研究者)
基調講演者が看護大学の講義で長年行ってきたわかりやすいお話をダウン症の人の魅力と人間力あふれる姿をビデオを交えてご紹介。

1:30~2:30:
基調講演:
ダウン症を持つ人の命の尊厳と人権  ー過去・現在・未来・国内国際的実情ー
百溪英一
(茨城県ダウン症協会事務局長、元国際ダウン症連盟FIDS理事、父親)

座長・質疑応答: 船橋秀彦(福祉型専攻科シャンティつくば代表茨城県障害者問題研究会代表元特別支援学校教員
2:30~3:30:寄せられたメッセージの紹介と質疑応答

*参加したいとのご連絡を各政党の議員からいただいております、少なくとメッセージを伺える予定です(事情により参加できない方もおいでになるかもしれません。)

日本共産党: 紙智子参議院議員倉林明子参議院議員
れいわ新選組:木村英子参議院議員船後靖彦参議院議員
立憲民主党:阿部知子衆議院議員石垣のりこ参議院議員打越さく良参議院議員
社会民主党:福島瑞穂参議院議員

 本問題の論議のポイント(以下の点についてお考えをまとめて参加していただけると効果的です)

1)マススクリーニンに準じた施策は約束違反です 
厚労省は自ら新指針の基本的な考え方として、「2,ノーマライゼーションの理念を踏まえると、出生前検査をマススクリーニングとして一律に実施することや、これを推奨することは、厳に否定されるべきである」としながら、今回の母子手帳の交付時にチラシを用いて知らせる行為はマススクリーニングに大きく近づくことになります。また、日本では遺伝カウンセリング体制が未だ整っていず、その状況での情報提供は、仕方によっては一律検査実施とも取れる行為と考えます。関係団体の意見もほとんど聞くことなく、強引に「全妊婦に出生前診断のことを周知する」行為は認められません。

2)保健所の情報提供などはできない
日本政府は1997年に施行された地域保健法に基づき、保健所の統廃合を行い、全国の保健所が半減しました。その結果、新型コロナウイルスのまん延の対応に大きな問題が生じ、未だ解決しないまま、今なお、保健所の混乱が続いています。この最中に出生前検査の情報提供など、十分な説明ができる時間があると考えられないのは火を見るより明らかです。

3)保健婦やカウンセラーはダウン症について熟知していない(正しい助言はできない)
出生前検査について、保健婦やカウンセラーが熟知しているとは、講演者の親の会の活動や看護大学教員をしてきた中でとても考えられない。看護学生は実際を知らずに卒業しています。そのため、正確な情報提供ができるとは思えません。

4)この施策はダウン症の人に対するヘイトスピーチです
全妊婦に出生前診断を受けさせるためにはダウン症の人の可能性や人間性、幸福な生活実態などについて十分な説明をするはずがない(説明すれば検査や中絶を辞退する人がでて産婦人科業界にとってマイナスですから)ことから、ダウン症の人に対する社会的イメージを明らかに低下させる。つまり、国と日本医師会が税金を使って、保健所の保健師を使ってダウン症の人に対するヘイトスピーチを全国展開するということなのです。

5)憲法14条に規定されている平等権の露骨な侵害です。
「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分または門地により、政治的、経済的または社会的関係において、差別されない。」という条文により、日本はあらゆる差別を禁止しています。ですから、生まれる前に殺されても良いことを示唆する、検査の施策やマスコミ報道はダウン症の人の名誉棄損であり、憲法14条違反もしくはその幇助に当たると考えられます。人を、正当な理由なく、属性や信条を理由に不利に扱うことは許されないこの条文と整合性のある施策なのか厚労省は説明責任があります。

) 国連の障害者権利条約を完全無視
障害者権利条約では、障害に基づくあらゆる差別を禁止しています。この「差別」とは、障害者であることを理由とする直接的な差別だけでなく、例えば過度の負担ではないにもかかわらず、段差がある場所に仮設式スロープを提供しないなど、障害者の権利の確保のために必要で適当な調整等を行わないという「合理的配慮の否定」も含まれるということが示されています。また、障害者が他の人と平等に、自立した生活を送れるための地域社会への包容について定めています。

) 当事者の意見抜きで進められた施策は国連の障害者権利条約違反
障害当事者の間で使われているスローガン「“Nothing About Us Without Us”(私たちのことを、私たち抜きに決めないで)」にも表れているとおり、障害者団体も同席し、発言する機会がないまま進められました。 NIPT 等の出生前検査に関する専門委員会 構成員名簿にダウン症の人や家族会の代表者は入っていません。

8) 障害者権利条約のいう「障害に対する意識の向上」を阻害
障害者権利条約の第8条意識の向上には以下の記載があるが、厚労省の新指針 はこれと真逆の方向に国民を啓発するものです。

1 締約国は、次のことのための即時の、効果的なかつ適当な措置をとることを約束する。
(a) 障害者に関する社会全体(各家庭を含む。)の意識を向上させ、並びに障害者の権利及び尊厳に対する尊重を育成すること
(b) あらゆる活動分野における障害者に関する定型化された観念、偏見及び有害な慣行(性及び年齢に基づくものを含む。)と戦うこと
2 このため、1の措置には、次のことを含む。
(ii) 障害者に対する肯定的認識及び一層の社会の啓発を促進すること。
第十七条 個人をそのままの状態で保護すること
 全ての障害者は、他の者との平等を基礎として、その心身がそのままの状態で尊重される権利を有する。
これらの、ことをそれぞれの国家が念頭に置いて施策を進めるべきことにことごとく反する指針を出すことは許されない。

8) 国民も国会議員も知らないうちに起案された施策は無効
本学習会に際して関連領域や女性国会議員に伺ったところ、本問題を認識している国会議員はほとんどおりませんでした。この状態ではもちろん国民が知る由もありません。上記の「NIPT 等の出生前検査に関する専門委員会」の名簿を見ても、この施策により利益を得る立場の人ばかりが目立ちます。障害者団体の意見というのもほとんど資料化されていませんし全く反映されておりません。障がい者サイドの声は巧妙に隠蔽されているということに気付くべきです

9) ダウン症の人の人権侵害行為に国家予算をつぎ込んでよいのか
このダウン症児者のスクリーニング推進施策には国家予算の支弁が伴っています。少なくとも。
1.「NIPT等の出生前検査に関する専門委員会」(計7回開催)の開催経費
2. 「NIPT 等の出生前検査に関する専門委員会」委員19名の謝礼と交通費、資料作成費など
3. 出生前診断を妊婦に周知させるためのチラシ代、パンフレット、ホームページ作成
今回の母子手帳の交付時にチラシを用いて知らせる行為が明記されています。

10) 内閣府の言う「障害を理由とする差別の解消推進」が出生前診断だというのか
内閣府は国連の「障害者の権利に関する条約」の締結に向けた国内法制度の整備の一環として、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的として、平成25年6月、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(いわゆる「障害者差別解消法」)が制定され、平成28年4月1日から施行されましたとHP上に書いています。「全妊婦に対する出生前診断の周知」は日本国憲法、そして日本が批准した障害者権利条約や「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(いわゆる「障害者差別解消法」)と全く矛盾する違法な施策ですから中止すべきです。

10) ダウン症の出生前診断ビジネスは親を脅かせば金を出す悪質な不安商法
今回の新指針は、「実施施設の拡大に加え、35歳以上に限っていた検査を全年齢にみとめ、市町村で母子手帳交付の際に保健婦などがチラシを用いて対面で検査について情報提供する」となっています。妊娠して不安な気持ちを持つ妊婦さんに、保健所の保健師が出生前診断があることやその中身を書いたパンフレットを示して不安を助長させて、検査(15~20万円)を受けさせる気にさせる行為は悪質です。

11) 出生前検査実施医療機関や検査分析機関の認証利権の温床
「NIPT 等の出生前検査に関する情報提供及び 施設(医療機関・検査分析機関)認証の指針 」では妊婦等に対する出生前検査の正しい情報の提供及び認証機関における受検を推奨するための広報啓発を行うとともに、出生前検査実施医療機関や検査分析機関の認証基準の策定及び実施医療機関や検査分析機関に対する認証制度の運用等の事業を行う。とされているが、これは日本産婦人科医会会員である産婦人科医師の収益をモグリ業者に奪われないように保護することを目的としたもので、検査・中絶ビジネスにおける収益の独占を目的としている。厚労省にとっては許認可権限による何らかのメリットがあるかもしれない。

*このまとめは基調講演者の意見と、京都ダウン症児を育てる親の会 の佐々木和子さんが日本医学会に提出した「新型出生前検査新指針に対する意見書を参考にして作成しました。

このフライヤーのPDFはこちらからダウンロードできます。

現在624名の署名があります。(学習会開催時点)

本ホームページはダウン症国際情報センター(DSIJ)が作成して発信しております。

◆「ヘイトスピーチ」について知っていますか?
(以下は法務省の「ヘイトスピーチ、許さない」HPより)

 平成29年10月に実施された「人権擁護に関する世論調査」(内閣府)においては、約43%の方が「ヘイトスピーチ」を伴うデモ等について知らない、と回答されていました。

 法務省の人権擁護機関では、ヘイトスピーチの問題を理解していただくため、その後も様々な取組を行ってまいりました。

 その一つとして「ヘイトスピーチ、許さない。」をメインコピーにした黄色いポスターの掲示があります。メインコピーが大きく、目立つポスターですので、「見たことがある」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 法施行5年を迎えたこの機会に、このホームページが、改めて「ヘイトスピーチ」について考えていただき、「ヘイトスピーチ、許さない。」の思いを新たにしていただくきっかけとなればと思います。

◆ヘイトスピーチって何なの?

 特定の国の出身者であること又はその子孫であることのみを理由に、日本社会から追い出そうとしたり危害を加えようとしたりするなどの一方的な内容の言動が、一般に「ヘイトスピーチ」と呼ばれています (前述「人権擁護に関する世論調査」より)。

 例えば、

 (1)特定の民族や国籍の人々を、合理的な理由なく、一律に排除・排斥することをあおり立てるもの

 (「○○人は出て行け」、「祖国へ帰れ」など)

 (2)特定の民族や国籍に属する人々に対して危害を加えるとするもの  

 (「○○人は殺せ」、「○○人は海に投げ込め」など)

 (3)特定の国や地域の出身である人を、著しく見下すような内容のもの  

 (特定の国の出身者を、差別的な意味合いで昆虫や動物に例えるものなど)

などは、それを見聞きした方々に、悲しみや恐怖、絶望感などを抱かせるものであり、決してあってはならないものです。

ヘイトスピーチの何が問題なの?

 人々に不安感や嫌悪感を与えるだけでなく、人としての尊厳を傷つけたり、差別意識を生じさせることになりかねません。一人一人の人権が尊重され、豊かで安心できる成熟した社会の実現を目指す上で、こうした言動は許されるものではありません。

 民族や国籍等の違いを認め、互いの人権を尊重し合う社会を共に築きましょう。

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