メディア資料ライブラリー出生前診断

日本医学会が出生前診断を全妊婦可能に、実施施設も拡大 ダウン症者の人権の最大の危機

日本のT4作戦が政府の後ろ盾で、進められています。ダウン症という属性を持つ人達に大きな危機。


このページは子どもたちの人権蹂躙を心配する人たちのための情報備忘録です。
オリジナルソースのURLをつけてあります。
*日本医学会とは



引用元2/18(金) 18:41 https://news.yahoo.co.jp/articles/123da16a2f410cbce6a820139fc04a2b335de278


*以下は本文のテキストより

妊婦の血液から、おなかの赤ちゃんのダウン症などを調べる出生前検査(NIPT)について、日本医学会の委員会は18日、検査の対象となる妊婦の年齢制限をなくすことを決めた。35歳以上とされてきたが、新指針では赤ちゃんの病気に不安を抱えるすべての妊婦が受けられる。4月以降、早い時期に始められるようにする。

出生前検査が身近な存在に 受ける?受けない?様々な視点から
出生前検査 そもそも女性が「選択」できる社会になっているか
 海外では、年齢を問わず広く検査している国もある。日本では2013年、学会が認めた大学病院などで臨床研究として始まった。現在は108カ所で実施されている。検査を経て陽性が確定した人の9割は中絶を選んでいるとの報告もある。

 検査はこうした重い判断も伴うことや、ダウン症などの障害のある人への差別につながる懸念もあり、慎重に扱われてきた経緯がある。
2022年2月18日 19時27分 
https://www.asahi.com/articles/ASQ2L6CVLQ2BULBJ015.html


2022年02月18日19時43分 https://www.jiji.com/jc/article?k=2022021801017&g=soc


大分新聞2022/02/18(金) 18:16 https://www.oita-press.co.jp/1002000000/2022/02/18/NP2022021801001180


フジテレビ [2022/02/18 22:09] https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000245281.html


福島民報 2022/02/18 18:14 https://www.minpo.jp/globalnews/detail/2022021801001180


出生前診断、全妊婦可能に

実施施設も拡大、日本医学会

妊婦の血液から胎児の染色体異常を調べる新出生前診断について、日本医学会の運営委員会は18日、これまで35歳以上に限ってきた検査を35歳未満にも認める新たな指針を公表した。中核となる基幹施設の下に連携施設を設けるなどして検査を受けられる病院の数も拡大する。

 新出生前診断は、十分に理解しないまま安易に広がると命の選別につながるという指摘もある。運営委員会は、適切な遺伝カウンセリングを通じて十分な情報提供を行い、検査を受けない選択肢も提示するなど丁寧に対応したいとしている。

 日本産科婦人科学会は、遺伝カウンセリングなどの体制が整った認定施設でのみ実施を認めてきた。だが、体制の整っていない無認定の民間クリニックが急増し、十分な結果の説明がないまま妊婦が混乱する問題が起きたため、新たな制度作りを進めてきた。

 これまで検査を受けられる対象は、胎児の染色体異常のリスクが上がるとされる35歳以上や、過去に染色体異常のある子どもを妊娠した経験がある人だった。

 新指針では、遺伝カウンセリングを実施しても染色体異常に対する不安が解消されない妊婦については、本人の意思が尊重されるべきであるとし、全年齢に認めた。実施前には、年齢が下がるほど検査の的中率が低下することなど検査の限界を十分に説明するよう求めている。

 認定施設が参加する団体によると、2021年9月時点で認定を受けているのは109施設ある。一方、インターネットで調べた結果、認定を受けていない施設は美容外科など166施設に上ったという。

新潟日報 2022/2/18 18:42 https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/28252


JIJI.COM 2/18(金) 18:22 https://news.yahoo.co.jp/articles/61458f6a3f75f8fa56bf36f7f1f57dd2792bf596


妊婦の血液から胎児の染色体異常を調べる新出生前診断について、日本医学会の運営委員会は十八日、これまで三十五歳以上に限ってきた検査を三十五歳未満にも認める新たな指針を公表した。従来の認定施設の下に連携施設を設けるなどして検査を受けられる病院の数も拡大する。三月から新指針での認定受け付けを開始し、春以降に運用が始まる見込み。
 新出生前診断は簡便に実施できる一方、命の選別につながるとの指摘もある。運営委員会は、適切な遺伝カウンセリングを通じて十分な情報提供を行い、検査を受けない選択肢も提示するなど丁寧に対応したいとしている。
 日本医学会などは、遺伝カウンセリングなどの体制が整った認定施設でのみ実施を認めてきた。だが、体制の整っていない無認定の民間クリニックが急増し、十分な結果の説明がないまま妊婦が混乱する問題が起きたため、厚生労働省もオブザーバーとして参加し新たな制度作りを進めてきた。
 新指針では、検査の主な対象として胎児のダウン症などのリスクが上がる高齢の妊婦や、過去に染色体異常のある子どもを妊娠した経験がある人を挙げた。
 ただし、遺伝カウンセリングを実施しても不安が解消されない場合は、…
中日新聞2022年2月19日 05時00分 https://www.chunichi.co.jp/article/421078


共同通信 2022.2.18 23:32 https://www.47news.jp/news/7431627.html


新型出生前診断 条件付きで全年齢に対象拡大案
 22年春以降実施へ

妊婦の血液から胎児の染色体疾患を検査する新型出生前診断(NIPT)について、国や関連学会などが参加する運営委員会が、検査対象を高齢の妊婦以外にも条件付きで広げる案をまとめたことが明らかになった。現在はおおむね35歳以上の妊婦が対象だが、検査の前提となる情報提供やカウンセリングを、胎児の病気に不安を持つ全ての妊婦に認める。今春以降の実施を目指している。

 委員会関係者によると、高齢などリスクの高い妊婦を対象とする原則は変えないものの、検査に関するきめ細かな情報提供や検査前後の「遺伝カウンセリング」の実施を条件に、年齢を問わず容認するという。

 NIPTはダウン症など三つの疾患の可能性を調べる。日本産科婦人科学会(日産婦)の指針に基づき、日本医学会の認定施設で行われてきたが、妊婦の採血で検査できる手軽さから、無認定の施設が増え、すでに多くの妊婦が利用している実態がある。遺伝カウンセリングが不十分で、確定検査を受ける前に人工妊娠中絶を選択する例も報告されている。

 委員会が対象拡大を検討しているのは、こうした無認定施設での検査を減らし、認定施設で指針に基づいた情報提供や遺伝カウンセリングを受ける機会を保障する狙いがある。

 


山陰中央日報2022/2/19 04:00 https://www.sanin-chuo.co.jp/articles/-/166467


【独自】新型出生前検査、対象拡大へ…不安持つ妊婦にも容認

全年齢、不安持つ妊婦にも
妊婦の血液から胎児の病気を調べる「新型出生前検査」について、国や関連学会などが参加する運営委員会の作業部会が、対象となる妊婦の要件を拡大する案をまとめたことが分かった。年齢を問わず、胎児の病気に不安を持つ妊婦にも認める。検査を受ける全ての妊婦にカウンセリングの機会を確保する狙いがある。31日の運営委員会の会合で議論し、今春以降の実施を目指す。

新型出生前検査は採血だけでできるが、十分な遺伝カウンセリングが必要だ(東京都内の認定施設で)
 検査はダウン症など三つの病気の可能性を調べる。人工妊娠中絶につながる倫理的な課題があるため、日本産科婦人科学会(日産婦)が指針を作り、高齢の妊婦や、超音波検査で胎児の病気の可能性が示された人などに限って認めていた。

 運営委員会で議論する新たな案では、正確な情報を伝え、妊婦の選択を支援する「遺伝カウンセリング」を条件に「胎児の病気に不安を持つ妊婦」にも認める。

 実施施設も増やす。これまでは出産に対応できる大学病院を中心に認定されてきたが、出産する施設と連携した不妊治療クリニックでの実施も認める。その場合、臨床遺伝専門医か、出生前検査に関する研修を受けた産婦人科医の常勤が必要となる。

 検査の前後には、遺伝カウンセリングを実施し、病気が見つかった場合に出産するかどうかなどについて、相談に応じる。

 検査を巡っては、近年、指針に基づかない認定外施設が急増し、トラブルも発生。国が参加する運営委員会で、新たなルールづくりを急いでいた。

認定外施設で検査 防ぐ狙い

 認定外には美容外科など専門外の施設が多い。「胎児の病気の可能性がある」との検査結果を郵送だけで知らされ、相談に応じてもらえず、妊婦が混乱するトラブルも報告されている。

 認定外の数は昨年の時点で全国138施設とすでに認定施設(108施設)を上回る。国内の検査数は推計で年間約3万6000件とされているが、半数以上が認定外で行われているという調査結果もある。

 今回の案では、不妊治療クリニックなどにも認定を広げ、妊婦がカウンセリング体制の整った施設で検査を受けやすくなることが期待される。

 ただ、認定外では安価だったり、三つの病気以外も調べられたりすることを売りにしている場合もある。認定外への流れをどれだけ食い止められるかは不透明だ。検査は、産むか、産まないかという重要な決断に関わる。カウンセリングの大切さを妊婦に理解してもらう情報提供が欠かせない。(医療部 大沢奈穂)

読売新聞オンライン 


「検査を受けていたら、彩英(さえ)は今いなかったかもしれない」

私は、両親から衝撃的なことばを聞いた。ダウン症の妹のことだった。いま、新型出生前検査=NIPTを受けた人のうち胎児にダウン症などの障害がある可能性が高いとわかった人の9割は出産を諦めている。命を選ぶとはどういうことなのだろう。私は、決断を迫られた女性たちに話を聞くことにした。
(おはよう日本ディレクター 植村優香)

筆者(左)彩英(真ん中)次女の佳奈(右)

3姉妹の長女の私は、9歳年が離れた末っ子の妹・彩英(18)をかわいがってきた。
東京で働く私が福岡に帰省するのを、彩英はいつも楽しみにしてくれている。

最近、彩英はスマホを覚えた。
新幹線で帰る私の現在地を「今は何県?」と逐一確認してくるメッセージがおもしろくて、私はつい車内で笑ってしまった。
家族と迎えた正月、一緒に近所の神社に初詣に行って、おせちを食べて…。
私たち家族にとって、ダウン症の彩英がいるのは、当たり前の日常だ。

ダウン症とは、染色体の異常による先天性の症候群。
それを産まれる前に妊婦の血液から簡単に調べられるNIPTが日本で導入されたのは10年ほど前、私が学生の頃だった。
当時そのことを伝える記事を読んで、とても複雑な気持ちになった。
もちろん個人の選択であって、とやかく言うことではないけれど、妹の存在を否定されているような気がしたのだ。

最近、そのNIPTを学会が認定していないクリニックが行い、十分なカウンセリングが行われていないケースもあるため、国が対策に乗り出すという。
私はこのテーマに取材者として向き合うことにした。
「分かっていたら産めなかったかもしれない」
まず話を聞いたのは、両親だ。
妹の彩英が生まれた18年前、NIPTのような簡易的な検査はなかった。

私「もし、彩英を産むときにNIPTがあったら受けていたと思う?」
母「あの時の自分なら受けていたと思うよ」
私「どうして?」
母「どうしてって、健康な子がほしいと思ってしまうんじゃないかな。だからまだそういう検査が一般的じゃなくてよかったと、今の自分は思うけど。でもその時受けていたら、彩英は今いなかったかもしれない」
父「そうかもしれないね。そこで産むという決断をできたかは自信がないね」
彩英のことをとても大切にしている両親のことばに、私は衝撃を受けた。
そして、両親はしきりに「あの時の自分なら」と言った。

告知に両親が受けたショック
彩英は、産まれてすぐにダウン症の疑いがあると告知された。
確定の診断を受けるまでの1か月、父はひとり全国の神社にお参りに行っていたという。
すがるような思いだったのだろう。

ダウン症確定を知らせる電話は、父が仕事で家にいないときにあった。
電話を受けた時の母の姿を、私は今も覚えている。
見たことがないくらい泣いていた。

私は「お父さんが事故にでも遭ったんだろうか…」とおびえながら母を見ていた。
そのときの思いを、初めて聞いてみた。

母「ダウン症と診断されてから、優香(筆者)や佳奈(次女)を抱いていたときの、愛おしい、あたたかな、包み込まれるような穏やかな気持ちになれなかった。私のことを人でなしって思うかもしれないけど、本当にそういう感情だったよ」

父「これは誰にも言ったことがなかったけど、胸が痛む時期がずっと続いていた。仕事をしているときは一瞬忘れられるけれど、ふと考えたり思い出したりすると胸が締め付つけられるように痛い、そんな時期が続いていた」
無口でおおらかな父も、深いショックを受けていたことが分かった。

そんな感情を抱いた「あの時の自分なら」、検査を受けて異常があると分かったら産む決断はできなかった、ということなのだろう。

今、彩英に愛情をたっぷり注いでいる両親でさえ、産めなかったかもしれない…。
9割が中絶を選ぶという事実が、急に実感を伴った。

毎日泣きながら話し合い 夫婦が選んだ中絶

ブログネーム おかゆさん(38)
夫と保育園に通う子どもの3人暮らし
2021年7月、NIPTをきっかけに第2子の染色体異常がわかり中絶
おかゆさんは、自分の経験を同じ境遇の人たちに伝えられたらと取材を受けてくれた。
第2子を授かったのは38歳。
高齢出産は染色体異常などのリスクが高まる。
NIPTで「異常がないことを確認したかった」という。

おかゆさん
「安心のためにと、今思い返すとちょっと気軽に受けてしまったと思います。もちろん異常がある可能性もあると分かっていたけれど、そこに考えは及んでいませんでした」
検査を受けたのは「NIPT専門」をうたうものの、学会に認定されていない「非認定」のクリニックだった。
ウェブで申し込み、指定された住所を訪ねると、雑居ビルだった。
その1室に10人ほどが集められ、検査の説明を短く受けた。
順番に採血し、結果の郵送先を記入して、会計。
ものの1時間で終了した。

10日後。
自宅に郵便で届いた封筒を開けると、A4の紙が2枚。
1枚目には「18トリソミー※:陽性」と書かれていた。
染色体に異常があることを示していた。

頭が真っ白になった。

※18トリソミー=染色体異常の一種
通常2本である18番目の染色体が3本あることでおこる障害
ダウン症の場合は21番目の染色体が3本
もう1枚の紙には「染色体異常とは」と簡単な説明があるだけだった。
非認定施設では、胎児の染色体異常が分かった人たちへのケアが不十分なケースが多い。

おかゆさんは、本やインターネットで情報を集めるしかなかった。
NIPTは偽陽性が出る場合もあり確定検査を受ける必要があるが、その病院も自分で探し、確定診断を受けた。
そして18トリソミーは生存率が低く、妊娠の途中で亡くなってしまう確率も高いことを知った。
産まれたとしても、第1子を保育園に預けて共働きしているおかゆさんは、医療的なケアがどれくらい必要になるのか不安を覚えた。
一方で、18トリソミーの子どもを育て、幸せに生活をしている人たちのブログも読んだ。

毎日泣きながら夫と話し合いを続け、夫婦が下した決断は「中絶」だった。
おかゆさん
「産んだ場合、家庭の環境が一変する。そちらに踏み出す勇気が持てなかった。育てる覚悟ができなかったというのが大きな理由です」
「決断をしたときは中絶を選んだら幸せになってはいけないと思っていました。でも今は、赤ちゃんは私たちを不幸にさせようとおなかに来たわけではない、私はずっと不幸でいなきゃいけないわけじゃない、と思えるようになってきました。命を『選べてよかった』と100%言い切ることはできません。でも『選択肢があったことはよかった』と思っています」
おかゆさんは、必死に自分の子の命と向き合っていた。
「中絶を選んだ9割」の一人一人に、数字だけではイメージできない苦悩があるのだと知った。
「産むのは君だから」孤独の中で中絶を選択

「産むのは君だから」孤独の中で中絶を選択

聡美さん(仮名・40)
夫と子ども(3)の3人暮らし
通常のエコー検査がきっかけで第2子のダウン症がわかり中絶
待ち合わせ場所に来た聡美さんは、物腰柔らかくほがらかな人だった。
聞くと、ダウン症の人やその家族に後ろめたさを抱いていて、街中で見かけると避けてしまうという。
一つ一つことばを絞り出すように話す聡美さんは、とても苦しそうだった。聡美さんは、通常のエコー検査で赤ちゃんの首のむくみが指摘されたことがきっかけで、羊水検査を受け、ダウン症がわかった。
産むか中絶するかを決めるまでに残された時間は2週間しかなかった。日本では、中絶は22週未満までと法律で定められている。
聡美さんのように短い期間で決断を迫られるケースは多い。

聡美さんは、ひたすらダウン症の子どもを育てる親のブログを読みあさった。
しかし見つけられたブログは、ダウン症の幼い子を育てる親が書いたものばかり。
成人した後のものもなく、福祉や支援の情報にもたどり着けなかった。

自分たち夫婦が先に死んだら、ダウン症の子の世話を上の娘に任せることになるのだろうか。胎動を感じ赤ちゃんに愛情を抱きながらも、不安でいっぱいになっていった。

聡美さん
「ダウン症の子を育てる方のブログとか見て、すごくかわいらしくて、幸せそうで、私たちでも育てていけるんじゃないかと思う日もあれば、将来、自分たちが死んだ後、さみしい思いをさせるんじゃないか、長女に負担をかけるんじゃないかと思う日もあって。決断しなければいけないけれど、決断したくない。そういう状態でした。産もう、頑張ろうと思ったり、やっぱり無理だと思ったり。そんな日々を繰り返しているうちに不安だけが大きくなって、いつからか中絶という方向に気持ちが傾いていました」
唯一の相談相手だった夫は「産むのは君だから」と最終的な決断を聡美さんに委ねた。
結局、中絶を選んだ聡美さん。
そして、亡くなった280グラムの女の赤ちゃんを手に抱いた。
聡美さん
「赤ちゃんと対面してだっこしたら、すごくかわいくて、大切で、いとしくて…。自分が命を絶っておいて矛盾しているんですけれど、それでもすごくかわいかったんです。先生や看護師さん、助産師さんが来たときには、赤ちゃんを隠しました。赤ちゃんに申し訳ない気持ちと愛おしいと思う気持ちが、人から見たら矛盾していると見えると思ったからです」
その日から、1年以上がたった。
赤ちゃんのことを想わない日は1日も無い。
ふとした瞬間に涙が止まらなくなることもある。

しかし、夫との間で赤ちゃんの話をすることはタブーになっていて、赤ちゃんは「いなかった」ことになっているという。

聡美さんは、孤独の中で自分の選択に苦しみ続けていた。
聡美さん
「後悔するような選択をしてはいけないと、赤ちゃんに対しても思っていました。でも今、後悔していないか問われると、難しい。誰かに相談できていたら違う未来があったのかなと本当に思いますね。こんなに苦しい思いをしなくてよかったのかなと。1人でずっと苦しんで悩んで、短い期間で決断しなければいけなかったから…。命が宿ったとき本当にうれしかったんです。本当にお母さんにしてくれてありがとうと、育ててあげられなかったけれど、赤ちゃんが本当に穏やかにどこかで笑ってくれていたらいいなと、勝手なんですけど、毎日それを思っています」
聡美さんは「パパとママのたからもの」と、赤ちゃんへの思いを母子手帳に書き込んで大切に持っていた。

短い時間と限られた情報の中で将来を想像するのが、どれだけ難しかったか。
孤独の中で厳しい選択を迫られる、出生前検査の現実を見せられたように思った。

出生前検査が広がる今、おなかの赤ちゃんの病気や障害を知った親たちを支えられる体制が不可欠ではないだろうか。

私は、決断を迫られた親たちを取材する中で、検査で障害がわかっても産むことを選んだ夫婦に出会った。
決め手は、夫婦が“本音”で話せたことだったという。
NHK 特集 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220127/k10013452261000.html


ダウン症の妹がいる私(筆者)は、両親から「もし障害のことが分かっていたら、産めなかったかもしれない」と聞いて衝撃を受けた。

おなかの赤ちゃんに障害があるとわかった人のうち、9割が中絶を選んでいるという新型出生前検査=NIPT。

決断を迫られた親たちを取材する中で、検査で障害が分かっても産むことを選んだ夫婦に出会った。

決め手は、夫婦が“本音”で話し合えたことだったという。

(おはよう日本ディレクター 植村優香)

やっぱり無理だ… 中絶のリミットが迫る中で

亜由美さん(42)は去年、ダウン症の男の子を出産した。
夫、秀行さん(36)と不妊治療の末に授かった念願の第一子。

それでもNIPTでダウン症の可能性があると分かったときは、すぐに出産を決意したわけではなかったという。


秀行さん、叶采(かなと)くん、亜由美さん

亜由美さん
「9割の人は諦めるという話を聞いたけれど、不妊治療をしてようやく授かった命なので、簡単に『じゃあ諦めます』とは思えなくて、『産みたい』という気持ちがありました。それでも、中絶が可能なリミットまでは『やっぱり無理だ』、『でも産みたい』、『でもやっぱり無理だ』と、一日一日変わるんです。本当にジェットコースターに乗っているような感じでした」
秀行さん
「男性は本音が言いづらいと思います。自分から『よし、じゃあ産もうよ』と言うのも、結局産むのは女性だから無責任ではないかとか、『産まない』と言うことも無責任ではないかと思って…。本当に、ギリギリまで自分の本音は話せませんでした」
なかなか本音で話し合えず揺れる2人が決断するきっかけになったのが、NPO「親子の未来を支える会」との出会いだった。
匿名の掲示板や電話で、出生前検査を受けた人の相談に中立の立場でのり、納得のいく決断をできるよう支援している。

亜由美さん・秀行さん夫婦はこのNPOの紹介で、中絶を選択した親と、ダウン症の子どもがいる親子の2組ずつから話を聞くことができた。
そこで印象に残ったのが、成人したダウン症の息子と暮らす吉岡さん夫婦の話だった

吉岡さんの息子 侑亮(ゆうすけ)さん 介護施設で働いている

亜由美さん
「小学校ぐらいまではイメージができたんです。たぶんゆっくり育っていくんだろうな、個人差はあるんだろうなというのは、周りやネットの情報でわかるんですけれど『その先』の情報は出ていなくて。吉岡さんのお子さんが、自分ひとりでバスと電車を乗り継いで働きに行っていると聞いたときに『えー』ってびっくりして。勝手に『あれはできないんだろうな』『これも無理なんだろうな』ってイメージを作って、私たちが諦めていたんです。実際に話を聞いてみて、それは違うんだとすごくよくわかったんです」
見ている方向が一緒になって、覚悟できた
亜由美さんと秀行さんは、聞いた話をもとに毎日話し合った。
秀行さん
「『話を聞いて、どう思った?』ということから始めて、『こういう部分は私たちの環境と似ているよね』とか、『こういう部分は、もっと不安になったな』とか。『じゃあ、ここはもっと考えようか』というのを繰り返していくっていう感じでした。『じゃあ、ここを調べてみるわ』とか」
亜由美さん
「それまではイメージでしかなかったのが、だんだんリアルになって。『ここは私たちでも乗り越えられるね、でもここはもっと不安だね』とかいう話に。最終的に、『何十年後の話は、私たち夫婦だけでも読めないんだから、今考えてもしょうがないよね』と思って」

秀行さん
「そもそも子どもは何のために産むのかというところまで考えました。普通考えないですよね。でも、最終的に妻が『僕を父親にしたい』って話をしてくれて。『2人で子育てをしてみたい』って言ってくれたのがいちばん大きかったですね。『じゃ、産もう』って。結構、スッと落ちましたね。妻がそう思ってくれていることがすごくうれしくて、『であれば、産みたいな』と思ってからは、めちゃくちゃスッキリしました」
亜由美さん
「私は、見ている方向が一緒になったなと感じたときからですね。つらいときも共有できるな、私一人が抱え込むんじゃなくて、夫と一緒に話していける、共有できると感じたときから、変わりました。そこで覚悟ができました。『産もう』って。NIPTを受けて、事前に障害のことがわかっていてよかったなと思います。事前に準備ができたし、自分たちの気持ちも整理できたし」
秀行さん
「いろんな人たちともコミュニケーションが取れたしね」
ふたりは今、とても楽しんで息子・叶采(かなと)くんとの時間を過ごしているという。

吉岡さんと叶采くん、秀行さん、亜由美さん

出産後、話を聞かせてくれた吉岡さん夫婦に叶采くんを会わせに行くと、「育児を楽しむ2人の姿が羨ましい」と話してくれたそうだ。
「自分は息子がダウン症であることを受け入れられるまでに時間がかかって、息子が小さかったときに子育てを楽しむことができなかった」と。
私は、出生前検査を受ける意味は、命を選ぶことだけではないと気付かされた。

支えがあって、家族になっていった

私のダウン症の妹・彩英(さえ)は今、特別支援学校高等部の3年生。
彼女はいつも楽しそうだ。

彩英
「学校も好きだし、スローステップ(デイサービス)も好きだし、家でお手伝いするのも好き!」

授業でつくった作品を見せる彩英

ひとりで電車を乗り継いで登校し、友達と一緒に学校生活を楽しんでいる。
放課後は大好きなスタッフさんたちのいるデイサービスを利用して、両親の帰宅時間に合わせて帰宅。
彩英がダウン症だと分かった直後に大きなショックを受けていた両親からすると、「あの時の自分」には想像もつかなかった毎日だ。

この穏やかな日々は、私たち家族だけでは手に入れることはできなかった。
発達が遅い彩英を受け入れ、お遊戯会のときにセリフの無い特別な役を作ってくれた幼稚園。
今でも近所で会うと「彩英ちゃん元気~?」と声をかけてくれる小学校の同級生たち。
彩英の将来を真剣に考え、寄り添ってくれる学校の先生たち。
困った時には豊富な福祉の知識で相談にのってくれる放課後等デイサービスの所長。
多くの人に支えられて、彩英は大きくなった。
それとともに、私たち家族にとって彩英の障害は、少しずつ、少しずつ平気になっていった。
「産むときにNIPTがあったら彩英は今いなかったかもしれない」と語った両親。
私は、さまざまな選択をした人たちの話を聞いたあとに、当時のことを改めて聞いてみた。


「正直に言って、自分のことしか考えていなかった。彩英がいて将来どうなるのかな、自分がどういう不幸になるのかな、そういうことばっかりを考えてしまっていた」

「ママもそう。彩英がかわいそうとか、障害のある子に産んでしまって申し訳ないとか、優香(筆者)や佳奈(次女)に申し訳ないとか。でも、結局は自分がいちばんかわいそうって思っていたんだと思う」

「今、彩英がいてよかったと思う?」

「当然だよ。今は彩英がいないことなんか想像できないし、想像したくない」

「わが家の灯りが消えちゃうよね。なんだろうね、命って。今は彩英がいないとだめだし。結局、“家族になっていく”んだよね」

これは、私の家族の話だ。彩英はたまたま温かい人に囲まれ、安心して利用できる福祉サービスが近くにあり、両親も共働きを続けることができた。運がよかったのだと思う。世の中には、障害のある子どもがいて、必要な支えを得られず苦しんでいる家庭があるのも事実だ。

出生前検査を、社会がどう使っていくか

出生前検査は、医療の進歩によって手に入れた技術だ。
私たちの社会は、これをどう使うのがよいのだろうか。
前編で紹介した、ダウン症の赤ちゃんを中絶した聡美さんから、取材のあと手紙が届いた。

「私は、自分の子どもの命を選別するのだから、後悔するような選択はしてはいけないと強く思って決断しました。でも、これまでを振り返ると『自分の赤ちゃんに会いたい』という気持ちがあることに気付いて、後悔しない選択なんてないのかもしれないと思うようになりました。私は、決断そのものではなく、決断に至るまでの過程を後悔しています。NIPTの普及にともなって、私のように苦しむお母さんが増えると思うと、胸が痛くなります」
子どもを産むか産まないか、決めるのは親だ。
それは、親の権利と言えるかもしれない。

一方で、決断するために必要な情報や知識を十分得られる環境は、まだ無い。
そして、障害のある子どもを産んだ後、誰もが安心して育てられる環境も十分ではない。

そうした中で、出生前検査で「陽性」の結果を前にした親は、自分たちの「本当の気持ち」を貫くことができるだろうか。

亜由美さん・秀行さん夫婦の相談にのったNPOの理事・水戸川真由美さんのことばに、ヒントがあるように思う。
このNPOでは、相談にきた人たちが選んだどんな決断も尊重することを大切にしているという。

叶采くんを抱くNPO理事 水戸川真由美さん

水戸川さん
「一人ひとり、条件、考え方、生活環境がみんな違うので、一律には答えが出せません。助言をするのではなく、1つの命をめぐる情報を提供するのが自分たちの役割と思っています。自立した夫婦が考え抜いて決めたことを尊重して、『応援するよ』という世の中でありたいと思います」
どんな命も、産まれてきていい。

そう言えるには、出生前検査を受ける人たちを支え、産まれてきた命を支えられる社会であることが必要だ。

そのために、私も発信をしつづけていきたい。


日本医学会が出生前診断を全妊婦可能に、実施施設も拡大 ダウン症者の人権の最大の危機」への1件のフィードバック

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Translate »