操られるいのちー生殖医療、進む差別・選別(DSIJ推薦図書)
2002年刊の本です。元聖霊病院副院長、保條朝郎先生の名著を読み直してみた。この本は20年以上前に書かれた本だが問題の抽出と考察のレベルは極めて高く現在でもこの領域の考察や問題点の整理がきちんとなされていないことがわかります。
この本も読まずに、ジェンダーと唱えて子殺しを否定しない身勝手な論者が未だに差別・選別を支持している。学習能力がないのか、当たり前の心を失っているのだろうか。
この本のP44にとてもわかり易い問題提起が明確に述べられているのでご紹介しておきます。(DSIJ事務局長)
「困ったことがある。それはこの頃ひとびとは胎児について、ほんの数%の異常が疑われても、がまんできなくなってきたことだ。進んだ医療技術がどんな小さな以上でも必ず見つけ出せるものだと誤解されていて。しかも見つかった以上の全てが排除されなくてはならないと思うようになった。
患者も妊婦もい者も胎児の異常をなくすには、以上を持った胎児を選別し排除すべきだし、殺してしまうのが良いと考える。その結果、今では、静かに、あるがままに、命を見守るなどという悠長なことは到底できない事となった。
忘れてはいけない大切なことは、選別、排除、殺しのターゲットとされるのが。異常の発生には何の責任もなく、最も無抵抗で一番小さい「いのちたち」に限られているということだ。(以上引用)
以下にこの本の目次を紹介しておきます。
この問題に関する今でも最新と言える大切なキーワードが込められていると感じました。
操られるいのちー生殖医療、進む差別・選別
はじめに
序 章 一町医者の迷い
第一章 胎児たちの受難
一 赤ちゃんを一人だけ殺してください
二 双子のうちの一人が死んでいる
三 双子を産んではみたが
四 いのちの芽ばえ
ランちゃんの受胎記録から
*いのちの幕開き*排卵ー大海原の遭難者*受梢ー精子たちのプロボーズ
*長くてつらい旅*者床ーママと手をつないだ*分化が始まる*胎盤のこと
*最初にできるのは神経系*あたしはお邪魔虫なの?
五 多胎妊娠の話
多胎妊娠はどれくらいあるのか
多胎妊娠にはストレスが多い
双子のできるまで
くすりで卵巣を剌激し過ぎるのは危険だ(医原性疾患)
六 胎児の数を 少なくする医療ー多胎の滅数術
欧米での胎児滅数術
わが国の胎児滅数術
多胎の減数術と移植医療
第二章 もてあそばれる小さないのち
一 体外受精と胚移植
体外受精はどんなふうに進められるのだろうか
タマちゃんの体験記録から
*タマゴのタマちゃん*卵巣から取り出される*体外受精の準備
*精子との出会い*受精卵の移植*運命の岐路(いのちの差別)
二 体外受精の今昔
汗みどろの実験室
ラットを手討ちにする
研究のためにはからだを張る?
三 受精卵を凍らせて保存しておく
四 卵の内部にまで立ち入る
顕微受精
五 受精卵をふるい分けるー着床前遺伝子診断
六 生かすか殺すか
七 いのちを捨てたり殺したりしてもよい時期
八 着床してからも差別されるヒト のいのち
超音波検査や羊水検杏絨毛組織の検杏
九 代理母騒動
妹の卵を借りて妊娠
十 混乱する 生殖医療(人工授精)のこと
異常児は引き取れば済むだろう
またぞろ代理母出産騒ぎ
十一 生殆医学と迫伝子工学ー違った個体をつくりだす
生殖細胞同上のクローニング( 卵から卵への追伝子移し替え )
ドリーの場合
クローン人間は出現するのか
十二 精子を用いない授精法
第三章 殺しと差別の医療
一 人工妊娠中絶術
中絶される小さな胎児( 胎芽)
*ポクの悲叫
大きな胎児の中絶
中絶大国の日本
二 優生ということ
優生思想はヨーロッパに始まった
日本では「まぴき 」と「 口滅らし」
三 堕胎ノ罪
四 違法阻却
五 優 生保護法ができるまで
産めよふやせよ 、病人は非国民だ
日米戦争から戦後へ
口減らしの法律「 優生保護法」
六 優生保護法の中身
質の悪い人は要らない
いつから胎児を殺してもよいのか
胎児不在の法律
七 優生保護法を見直すうごき
経済的理由
いのちの優劣
法改正にインパクトを与えた国際人口開発会議
日本人は人権侵害をしている
わが国の人口調節
八 優生保護法から母体保護法へ
法改正にまつわる パカげた話
中絶さえできればよいのだ
九 母体保護法は本当に変わったか?
園迎法阻却はそのまま残る
「 胎児条項」を盛り込もうとする動き
十 もうひとつの不思議な時期 、妊娠十二週
十二週以降の流産には「 死産屈」が必要
十一 不妊手術( 断種術)のこと
不妊手術と人工妊娠中絶術
偏見と差別の手術( ハンセン病と不妊手術)
ハンセン病と文化勲章( 癩患者には手錠をかけてでも )
「 癩」の文字は消えたが・・・
十二 中絶児と臓器移植
脳死母体と胎児と臓器移植
無脳児のこと
第四章 つらい思いの未熟児たち
一 閉ざされた囲いのなかで
二 うんとつらい異常児
Aちゃんの死
*骨に異常の先天性の病気
三 ヒトは生まれつき未熟児だ
四 「生育」と「成育」
五 未熟児を産ませようとする医療
六 未熟児医療と医療費
第五章「 いのち」の始まるとき
一 法律家の考える「 人」の始まり
二 受精後十四日
三 受精の瞬間
四 受精以前とする考え
五 二十三週を「 いのち」の始まりとする考え方
六 いのちの始まりの多様性
第六章「 いのち」の終わるとき
一 いのちの終わりのことも曖昧になっている
二 お祭り騒ぎの脳死移植
三 脳死判定の中止と「断腸の思い」
四 心臓死と脳死と脳死移植
五 最初に脳死移植は
六 死を大事にしない医療は荒廃する
七 不確かで悲惨な病人の死
八 死に逝く人の身になれるか
九 こんなかたちの死もある
第七章 あぶなくて、おかしな医療
一 医者の権威主義と独善性
二 医者の秘密主義とカルテ開示
三 死亡と医療事故
四 リンリ、リンリとは言うけれど
生命倫理は大はやり
生命倫理の審議会はおかしい
五 女性の権利と胎児のいのち
母親は胎児の生死を勝手に決めてよいのだろうか( 自己決定権)
女性の決定権と母体保護法、中絶や減数術に対する新しい意見
六 ヒト胚性幹細胞と生殖医療のこと
七 わが国にはきちんとした生命観がない
参考図書 文献
あとがき